アメリカ合衆国の独立記念館は、イギリスの植民地支配から決別する宣言を行った歴史的な場所です。世界遺産に登録されるまでにはどのような歴史があったのでしょうか。かつての首都としての役割や世界遺産に登録されるまでの経緯を英語を交えて解説します。
独立記念館とは?
アメリカ合衆国の独立記念館(Independence Hall)は、ペンシルベニア州フィラデルフィアに位置する歴史的建造物であり、アメリカ独立の象徴として知られています。ここは1776年にアメリカ独立宣言が採択され、1787年にはアメリカ合衆国憲法が起草された場所でもあります。その歴史的価値から、1979年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
独立記念館の歴史

独立記念館が建設からユネスコの世界文化遺産に登録されるまでの歴史を紹介します。
建設と初期の役割(1732年~1775年)
1732年、ペンシルベニア植民地議会のための会議場として建設が始まりました。
1752年 に完成し、「ペンシルベニア州会議事堂(Pennsylvania State House)」として使用されました。
18世紀当時、フィラデルフィアはイギリス領アメリカの主要都市の一つであり、政治・経済の中心地でした。
独立宣言の舞台(1776年)
1775年~1783年 のアメリカ独立戦争が始まると、各植民地の代表者がフィラデルフィアに集まり、「第二回大陸会議(Second Continental Congress)」が開催されました。
1776年7月4日、トーマス・ジェファーソンが起草したアメリカ独立宣言 が、ジョン・ハンコックを含む56名の代表によって署名されました。
これにより、13のイギリス植民地は正式に独立を宣言し、アメリカ合衆国が誕生しました。
アメリカ合衆国憲法の誕生(1787年)
独立戦争後、アメリカは連合規約(Articles of Confederation)に基づいて統治されていましたが、その統治は弱体であり、多くの問題が生じていました。
1787年5月25日~9月17日、「憲法制定会議(Constitutional Convention)」が独立記念館で開かれました。
ジョージ・ワシントン を議長とし、ジェームズ・マディソン や アレクサンダー・ハミルトン らが中心となって、アメリカ合衆国憲法 が起草されました。
1787年9月17日 に憲法が作成され、各州の批准を経て1789年 に施行されました。
19世紀~20世紀:保存と世界遺産登録
1800年、アメリカ合衆国の首都がフィラデルフィアからワシントンD.C.へ移転。
その後、独立記念館は一時期放置されるものの、19世紀後半から保存活動が進められました。
1966年 にアメリカ政府は周辺地域を「独立国立歴史公園(Independence National Historical Park)」として指定し、アメリカ合衆国国立公園局の管理下で観光地となりました。
1979年、ユネスコ世界遺産に登録され、「アメリカ独立と民主主義の象徴」として世界的に認められました。
現在の独立記念館
現在、独立記念館はアメリカの観光名所として、多くの人々が訪れる場所となっています。館内では、ジョージ・ワシントンが座った議長席や上院と下院からなるコングレスホールなどを見ることができ、歴史の重みを感じられる空間となっています。
世界遺産としての価値

独立記念館が世界遺産に登録された理由は、その建物が自由と民主主義の象徴として世界的に重要であるためです。ユネスコは、独立記念館を「アメリカ合衆国の建国と民主主義の発展において極めて重要な役割を果たした歴史的建造物」と評価しました。
建物の建築様式も注目に値します。独立記念館は英国様式のレンガ造りで、シンプルながら威厳のあるデザインが特徴です。建物の中央には時計塔があり、かつてはアメリカ独立の象徴とされるリバティ・ベル(Liberty Bell)が設置されていました。
独立記念館の歴史を英語で説明
- 1732: Construction begins as a meeting place for the Pennsylvania colonial legislature.
(1732年: ペンシルベニア植民地議会の会議場として建設開始。) - 1752: Completed as the “Pennsylvania State House.”
(1752年: 「ペンシルベニア州会議事堂」として完成。) - 1775-1783: War of American Independence.
(1775年~1783年: アメリカ独立戦争。) - July 4, 1776: The Declaration of Independence is signed.
(1776年7月4日: アメリカ独立宣言が署名される。) - May 25 – September 17, 1787: The Constitutional Convention is held, and the U.S. Constitution is drafted.
(1787年5月25日~9月17日: 憲法制定会議が開催され、アメリカ合衆国憲法が起草される。) - September 17, 1787: The U.S. Constitution is created.
(1787年9月17日: アメリカ合衆国憲法が作成される。) - 1789: The U.S. Constitution goes into effect.
(1789年: アメリカ合衆国憲法が施行される。) - 1800: The capital of the United States moves from Philadelphia to Washington D.C.
(1800年: アメリカ合衆国の首都がフィラデルフィアからワシントンD.C.へ移転。) - Late 19th Century: Preservation efforts begin.
(19世紀後半: 保存活動が始まる。) - 1966: The surrounding area is designated as “Independence National Historical Park.”
(1966年: 周辺地域が「独立国立歴史公園」に指定される。) - 1979: Listed as a UNESCO World Heritage Site.
(1979年: ユネスコ世界遺産に登録される。) - Present: A popular tourist attraction in America.
(現在: アメリカの観光名所として多くの人が訪れる。)
参考サイト:Wikipedia「独立記念館」
独立記念館の見どころ

会議室(Assembly Room)
東側の部屋で独立宣言や憲法が議論された歴史的な部屋。
太陽の彫刻の議長席:初代大統領であるジョージ・ワシントンが座ったとされる椅子です。背もたれに太陽の彫刻がされています。
コングレス・ホール(Congress Hall)
1階に下院議院、2階に上院議院があります。当時の議会の様子が伺えます。
リバティ・ベル・センター(Liberty Bell Center)
ひび割れたリバティ・ベルが展示され、自由の象徴として多くの観光客が訪れる。
インディペンデンス・ナショナル・ヒストリカル・パーク(Independence National Historical Park)
独立記念館を中心に、歴史的建造物が集まるエリアです。
まとめ
独立記念館は、アメリカ合衆国の自由と独立の精神を象徴する歴史的建造物です。ここで採択された独立宣言と憲法は、アメリカのみならず世界の民主主義にも影響を与えました。その価値が認められ、ユネスコの世界遺産にも登録されているこの建物は、歴史や政治に興味がある人にとって必見の場所と言えるでしょう。
フィラデルフィアを訪れる際には、ぜひ独立記念館を訪れ、その歴史的意義を肌で感じてみてください。

