神話は、その物語を通じて神聖な存在との繋がりを感じ、人々は精神的な安定や救いを求める手段となります。また、当時の人々が理解仕切れなかった自然現象を説明するための神話もあります。自然現象を説明する神の1柱にエジプト神話に登場する大変重要なラーという太陽神がいることをご存知ですか?
この記事では、世界に光と熱をもたらす神として崇拝される「ラー」を解説します。パワフルなラーがどのような神なのか、役割やルックスなどを英語で紹介していきましょう。
エジプト神話とは?
世界にいくつもある神話のなか、ラーはエジプト神話に登場します。まず、エジプト神話がどのような神話なのか、簡単に紹介しましょう。
エジプト神話の特徴
エジプト神話は、ナイル川流域で栄えた古代エジプト文明の人々が信仰した神々の物語です。おもな神には、本記事で紹介するラー、そして死者の審判を行なうオシリス、オシリスの妻で魔法と母性の女神であるイシス、天空の神ホルスやオシリスの弟で混沌と破壊の神セトなどがいます。
エジプト神話の死後世界の概念
エジプト神話では、死者の審判を行なうオシリスの前で、死者は審判を受けます。心臓と羽根と釣り合えば、死者は潔白とされて楽園アアルへの道が開かれ、釣り合わなければアメミトという怪物に心臓を食べられ魂は永遠に滅びるとされます。
エジプト神話では、ドゥアトと呼ばれる死後の世界での審判や再生が重要なテーマとなっています。
神話に登場する「ラー」ってどんな神?
さて、エジプト神話に登場するラーは、太陽神です。太陽神とは、生命の源であり、自然界の恵みをもたらす存在です。日本神話では天照大神、ギリシャ神話ではアポロンというように、それぞれの神話で太陽神がいます。
エジプト神話の太陽神「ラー」
エジプト神話における太陽神がラーです。ラーは、生命の維持に必須の太陽の光を象徴し、太陽が朝に東から昇り、西の空に沈むことを司どる神です。それだけでなく、人間を含んだ万物の創造者であり、宇宙の秩序を確立したとされる大きなパワーを持っています。
ちなみに、古代エジプト王ファラオは「ラーの子」とされ、ラーは王朝の守護神としても重要な役割を担いました。
このように、ラーはもっとも重要な神の一柱(ひとはしら)なのです。
太陽の神「ラー」の英語表現
ラーとは、かなりシンプルな名称ですね。ここからは、ラーの英語表現や関連することを英語を使って説明していきます。
”Ra”を英語で説明
ラーを英語にすると、こちらもシンプルな”Ra”になります。”Ra”は”Re”と書かれることもあります。
まずは、とても簡単な例文を2つ紹介します。
訳)ラーはエジプトの神です。
訳)ラーは太陽神の名前です。
”Ra”について英語でさらに説明
ラーは、エジプトの神々のなかでの最高神の1柱です。ラーの特徴などをさらに英語でみてみましょう。
訳)ラーは、エジプトの神々のなかで最高神でした。
supreme deityというフレーズで他の神と比較しても「最高神」ということを表し、至高の神や唯一神などとも訳されます。
訳)ラーは宇宙とすべての愛あるものの創造主であると信じられていました。
ここまで、ラーの偉大さが分かってきました。ここからは、さらに彼のルックスや司どったことなどを紹介しましょう。
ラーのルックスは?
ラーは男性神です。これだけパワーのある神は、どのような姿をしているのか?ここでは、その点を英語表現とともにみていきます。
ハヤブサの頭を持った人間の姿
ラーは人間の姿をしています。しかし、頭はハヤブサ(隼)であり、さらに頭上には太陽円盤と聖なるコブラを載せています。ハヤブサは猛禽類に分類される鳥で、時速300kmを超えるスピードで急降下する世界最速の鳥として知られています。
古代エジプト神話で、ラーがハヤブサの頭を持つ姿で描かれる理由は、そのハヤブサが古代エジプトでは「天空の支配者」として崇拝されていたためです。
訳)ラーは太陽の円盤を冠したハヤブサの頭を持つ男として描かれることが多く、これは太陽に対する支配権を表しています。
ハヤブサの英語はfalcon、ハヤブサの頭をfalcon-headedと表現しています。ここが、ラーのsymbolism(象徴性)なのです。
なお、エジプトの神々はラーのみならず、しばしば動物の頭部を持つ人間の姿で描かれています。これは、動物が持つ特性や象徴性を神々に付与するためでした。
ラーが司どった太陽の運行とは?
太陽神ラーは、太陽の運行そのものを司どる神として崇拝されました。では、実際にどのように運行すると考えられていたのかを紹介しましょう。
以下、太陽が出ている日中と沈んだ後の日没に分けてみていきます。
ラーによる天空の旅 – 日中
日の出とともに、ラーは夜の船マアンドジェトに乗り、天空を航行します。このとき、ラーはハヤブサの頭を持つ姿で描かれます。世界に光と秩序をもたらし、生命の源としての太陽の役割を強調しています。
訳)ラーが夜明けに東の地平線に現れたとき、彼はホル・アクティ(地平線のホルス)と呼ばれるハヤブサの姿をとりました。
引用:ARCE (American Research Center in Egypt)
ラーによる天空の旅 – 日没
日没とともに、ラーは夜の船メセクテトに乗り、冥界(めいかい)への旅へ出発します。ここではラーは羊の頭を持つ姿になると言われています。天にいるときには、冥界のナイルを船に乗って渡り12の門を通過しながら、また混沌の蛇神であるアポピスと戦いながら、西から日が昇る東へとずっと旅をしていきます。旅のなかで、冥界の神オシリスと合一し、再生の力を得てまた東から太陽が昇るということになるのです。
訳)西の地平線に到達したラーは、夜の12時間の間、地球を暗黒のなかに残し、冥界を航海しながら死者を照らし、創造の敵を滅ぼし、復活の神オシリスと合体して自らを再生しました。
夜の12時間は12の門を通過するというストーリーと結びついていそうですね。この夜の旅は死と再生の象徴です。神話の面白さを感じる、ラーの日中・日没後の旅を紹介しました。
引用:ARCE (American Research Center in Egypt):
ラーとピラミッド
ラーによる太陽の運行は、古代エジプト人たちにとっての死生観と深く結びついています。太陽が昇り、沈み、また日が昇るというサイクルが、生命の誕生、死、そして再生を意味していたのです。このことは死後の世界への旅と復活の希望を表しています。
ピラミッドに描かれるラーの太陽運行
エジプトと言えば、巨石の四角い底面を持つ三角錐の建造物ピラミッドですね。ピラミッド内部には、太陽神ラーの太陽運行に関する神話が壁画や象形文字によって描かれています。
ロンドンの大英博物館には、古代エジプトの文化財が多数展示されています。ロゼッタストーンやミイラたちは大変有名です。この大英博物館では、ラーの像がいくつかのピラミッドに描かれていると述べています。
訳)いくつかのピラミッドには、太陽神ラーの描写が見られます。
大英博物館の「古代エジプトの神々と女神たち」
最後に、ロンドンの大英博物館の「古代エジプトの神々と女神たち」ページを紹介しましょう。ラーの姿や貴重な文化財の画像や説明が載っています。ぜひご覧ください。
The British Museum “Ancient Egyptian gods and goddesses”
まとめ
本記事では、エジプト神話の最高神である太陽神「ラー/Ra」を紹介しました。古代エジプトの人々にとって死と再生の象徴であったラーの日中、そして日没後の旅も大変興味深いですね。筆者も次に大英博物館に行く機会には、改めてエジプトのセクションに行き、ラーについての解説をみたいという気持ちになりました。英語で知る神話、面白いですね!
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