みなさんは、「ジプシー」という言葉を聞いたことがありますか?
また、「ジプシー」から、どのようなイメージを思い浮かべますか?
「ジプシー」は、英語”Gypsy”からきたカタカナ言葉で、一定の場所に留まらず転々と放浪しているような人を指して使われています。
”Gypsy”は、ヨーロッパで移動しながら生活を営む民族のことを意味する単語ですが、迫害されてきた歴史的背景から、差別用語として捉えられています。
日本語でも放送禁止用語とみなされ、使用が憚られるカタカナ言葉「ジプシー」。
本来の英語の意味、そして正しい使い方がわからないという方は、誤解やトラブルを防ぐためにも、しっかりと理解しておくことが大切です!
周囲に聞きづらい「ジプシー」の意味と言い換え時の注意点を解説していきます!
「ジプシー」の意味
「ジプシー」、英語の”Gypsy”をそのままカタカナで表記した言葉です。
”Gypsy”とは、ヨーロッパを中心に生活している移動型民族の総称です。
辞書では以下のように定義されています。
- a member of a race of people originally from northern India who typically used to travel from place to place, and now live especially in Europe and North America
もともと北インド出身で、通常は各地を旅していた人種の一員で、現在は特にヨーロッパと北アメリカに住んでいる。- a member of a group of people originally from India, who traditionally live and travel around in caravans, and who now live all over the world. Most gypsies prefer to be called Romanies.
伝統的にキャラバンに乗って移動しながら生活し、現在は世界中に住んでいる。ほとんどのジプシーはロマニーと呼ばれることを好む。- someone who does not like to stay in the same place for a long time
長い間同じ場所に留まることを好まない人
”from northern India”や、”live and travel around”とあるからも、インド出身の放浪民族であること、またヨーロッパを中心に世界中に散らばった人を示しているのがわかります。
”does not like to stay in the same place for a long time”のように、定住せず、さまざまな地域や団体を渡り歩いて生活する人たちを比喩する言葉にもなっています。
「ジプシー」を使った日本語表現
移動民族の意味から転じて、いろいろなものを次々試したり、新しいものに乗り換えたりするような人が「ジプシー」と呼ばれるようになりました。
”Gypsy”は忌み嫌われている単語であること、差別的な意味合いを含むことを理解したうえで、状況や相手を慎重に見極めるようにしましょう。
ジプシーダンス
「ジプシーダンス」は、フラメンコやベリーダンスのように、華やかな衣装をまとって、情熱的かつ激しく踊るダンスのことです。
ダンスに用いられる”Gypsy music”は、移住先の国や地域、民族の音楽が影響し合った、ハイピッチでテンポの速い曲調、旋律の装飾や激しい転調が特徴です。
ジプシー状態
インターネットであらゆるものが手に入る便利な現代では、多すぎる情報に惑わされて意思が定まらない状態を「ジプシー状態」と呼ぶことがあります。
わかりやすくいうと、自分が何をしたいのか、何が欲しいのかがわからず、条件や希望を絞れなくてフラフラしてしまうような状態のことです。
就活ジプシー
就労条件にこだわりすぎて、希望の就職先が見つからない。
働く意義や、やりがいがわからずにくじけて早期離職を繰り返してしまう。
そんな若い世代(学生)を「就活ジプシー」と呼びます。
理想の職場を追い求めて、インターネットや外部の情報に惑わされ、意思決定できずにさまよっている状態を表しています。
コスメジプシー
化粧品を毎回もしくは頻繁に買い替える人は、「コスメジプシー」とも呼ばれます。
「コスメジプシー」は、自分に合った化粧品を見つけられず、さまざまな化粧品を試し続けている状態を意味する言葉です。
「コスメジプシー」の人には、飽きて使わなくなった、新しい商品に目移りした、などのような傾向がみられますが、その理由は個人によって異なるので、安易にひとくくりにして呼ぶことは避けておきましょう。
”Gypsy”の使用は要注意
”Gypsy”は、ヨーロッパをはじめとした世界の国々では差別用語として敬遠されている言葉です。
「スリをはたらく民族」や「物乞いをする民族」といったニュアンスが含まれることも珍しくありません。
これには、”Gypsy”が各地を転々としながら生活を続け、近隣諸国から迫害されてきたという歴史的背景が深く関係しています。
近年の日本においても、カタカナの「ジプシー」は、差別用語、放送禁止用語と認識する風潮が高まってきており、「ロマ」という言葉に言い換えられる傾向がみられます。
「ロマ」は、英語”Roma”に由来したカタカナ言葉です。
ロマニ語を話す”Gypsy”の人たちが、自分たちのことを”Romany”(ロマニ)と自称していたことから、差別用語”Gypsy”に代わる呼び名として知られるようになりました。
”Gypsy”の発音記号は、/ˈdʒɪp.si/ で、「ジュピスィ」のように読みますが、海外、特にヨーロッパでは、”Gypsy”を使うこと自体、避けておくのが無難といえます。
ふざけたり、冗談まじりに使ったり、安易に口にしないよう注意してくださいね。
あくまでも用法の確認として、少しだけ例文を紹介しましょう。
訳)「ジプシー」という言葉は、ジプシー、おもにロマ人とその文化を指します。
訳)ジプシーに対する偏見や誤解は多いです。
”Gypsy”の言い換え”Romany”
英会話で”Gypsy”を使うのは、誤解やトラブルを招く原因になりかねないため、おすすめできません。
民族について話すときや、どうしても話題にあがったときなどは、”Gypsy”と言い換えられる”Romany”を使う方が良いでしょう。
”Romany”を使った例文には、以下のような表現があります。
訳)ロマニ文化や習慣は、多くの場所で独特の存在感を示しています。
訳)どの国よりも大きなロマニ・コミュニティが存在します。
訳)ロマニ族は、長い間ヨーロッパ中の町から町へと旅をしていました。
まとめ
差別用語、放送禁止用語と見なされているカタカナ言葉「ジプシー」の意味と言い換え時の注意点を解説しました。
「ジプシー」は、英語”Gypsy”をそのままカタカナで表記した言葉です。
定住せずに各地を転々としながら暮らす移動民族を指した単語で、ヨーロッパをはじめ世界では差別的な意味合いが強いため、日常会話での使用は敬遠されています。
日本語でも、トラブルや誤解を生む恐れがあるので、安易に口にしないようにしましょう。
よく耳にするカタカナ言葉は、もとになっている英語の歴史的背景や語源を知っておくことがとても大切です。
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