海外との人やものの往来も増える一方の現在、コミュニケーションの手段として英語の重要性はかつてないほど高まっています。これを受けて、2020年の新学習指導要領により、小学校での英語が必修になりました。

教育においても教科としての英語は重視されており、この流れは今後も変化することがないでしょう。中学校、高校、大学などに進学する際の受験でも、英語は大きな比重を占めていて、英語の成績の良し悪しは進路を左右するものになっています。

こうした状況下、英語力を伸ばす目的で、学校以外に英語塾や英会話学校・教室に子供を通わせる家庭が増えています。どちらも英語を学ぶ場所ですが、どのように違うのかがよくわからない、という方も少なくありません。

そこで本記事では英語塾や英会話学校・教室を取り上げ、それぞれの特徴や違い、メリット・デメリットについて詳しく説明します。また、英会話を学ぶ方法として人気が高まっているオンライン英会話についても、効果的な利用法を紹介します。

子供の英語力向上には、その子に合った塾・学校選びが欠かせません。このふたつの性質の違いを理解して、子供と相性のよい学び方を選びましょう。

英語塾とは?

「英語塾」とは、文字通り、英語に特化した塾のことです。他の教科も対象にする学習塾と同様、学年別に分かれているのが一般的で、学校の授業を補い、さらに展開する内容の授業を行なっています。

英語塾では、「読む」「書く」を中心に、語彙や文法を丁寧に指導します。なかには、学校の中間テストや期末テスト対策や、高校や大学への受験対策をしているところがあるのも英語塾の特徴です。

英語の4技能に対応した塾も増加

冒頭で触れた新学習指導要領大学入試では「聞く」「話す」能力が重視されるため、最近では4技能対応の英語塾も増えています。

英語の4技能とは

  • 聞く(リスニング)
  • 話す(スピーキング)
  • 読む(リーディング)
  • 書く(ライティング)

のことで、これからの英語教育では、従来の英語の授業で使われてきた「読む」「聞く」受け身の能力だけでなく、積極的に「話す」「書く」を含めた、この4つの力をバランスよく伸ばすことが強く求められています。

新学習指導要領での英語教育

文部科学省は保護者向けに、新学習指導要領の基本的な考え方や、今回の改訂の内容をわかりやすくまとめたリーフレットを用意しています。

外国語教育(英語)で「新たに取り組むこと、これからも重視すること」は、次のように説明されています。

外国語教育
「聞くこと」「話すこと」に加えて、「読むこと」「書くこと」の力を育みます。

出所 【小学校の保護者の方へ】リーフレット(ダイジェスト版、A4・2ページ) (文部科学省)

英語塾で学ぶメリット

英語塾のメリット

それでは、英語塾で学ぶことにはどのようなメリットがあるのか、順に確認しましょう。

【メリット1】文法をしっかり学習できる

英語塾のメリットのひとつは、英文法をしっかり学習できることです。

新学習指導要領によって、子供たちが小学校や中学校で学ぶ文法事項は大幅に増えました

学習量が増えたことで、学校の授業のスピードは速くなり、授業だけではよく理解できない、知識がしっかり定着しない、ということも珍しくありません。このような場合、文法をしっかり指導してくれる英語塾は強い味方になります。

【メリット2】学校の成績がUPする

英語塾では文法や語彙を丁寧に指導します。

英語塾での学習内容は、学校教育の指導内容に準じていて、学校で学んだことを補強することができるため、学校での成績も向上します。特に学校の英語の成績UPを目指すなら、定期試験対策のある英語塾を選ぶとよいでしょう。

【メリット3】資格試験や入学試験の対策ができる

英語塾のなかには、資格取得を目的にするコースもあります。講師は資格を得るための指導経験も豊富なため、自宅での学習方法や、適したテキストなどの助言も充実しています。

特に入学試験については、英語塾では常に最新の情報を収集し、それに対応しています。試験に向けて、するべきことをわかりやすく示してくれるため、効率よく勉強に打ち込むことができます。

【メリット4】苦手分野の克服ができる

英語塾には、1対1のプライベートレッスンを実施しているところが多数あります。

学校の授業でわからないことがあったり、クラスメートの目が気になって質問できなかったりする場合、英語塾の個別指導なら、苦手分野を集中的に学ぶことができるので、短期間で効率的に苦手分野を克服できます。

英語塾のデメリット

このように、たくさんメリットがある英語塾ですが、反面デメリットもあります。

英語塾にもいろいろなタイプがありますが、文法や語彙を重視する英語塾では、英語を話す機会があまりありません。英会話スクールではないので、授業内容も英語を「話す」というよりは、英語を「勉強する」内容が中心になります。

また、一般的な英語塾の講師はほとんどが日本人です。なかには、音声教育を重視して、英語のネイティブスピーカーや、留学経験のある講師がいる英語塾もありますが、自然な英語を「聞く」「話す」力を伸ばすことを期待するなら、ほかの英語学習方法を探すことを勧めます

英語塾と英会話学校の違い

英語塾と英会話学校の違い

「さあ、英語を習おう」というとき、わたしたちがまず最初にイメージするのは「英会話学校」ではないでしょうか。

語彙や文法は学校の授業である程度学べますが、実際に英語で会話するとなると、それ以外の場で勉強する必要がある人がほとんどだからです。

「海外旅行に行きたい」「外国人と友だちになりたい」「海外駐在や留学の準備がしたい」といったニーズに応えてきたのは、英会話学校・教室です。

さて、ここまで説明してきた「英語塾」と「英会話学校」は、どのように違うのでしょうか。

英語塾と英会話学校・教室は、どちらも英語を学習する場ですが、さまざまな違いがあります。知らずに入ってしまってから、「思っていたのと違う」と違和感を覚えることがないよう、英語塾と英会話学校の違いを確認した上で、目的に合ったものを選びましょう。

目標に設定されていること

英語塾が目標にしているのは、主に学校での成績の向上や資格取得、志望校への合格などです。

これに対して英会話学校・教室の目標は、主に英語のスピーキング能力を向上させることです。

英語塾では「読む」や「書く」能力を中心にした指導が行われます。一方、英会話学校・教室は「話す」ことを重視しているため、スピーキングやリスニングなどの実践的な英会話力が身につきます。

教えている講師

英語塾の講師はほとんどが日本人です。英語塾は文法や語彙を重視するので、講師の資質として求められるのは、文法事項を解説する力です。

英語の文法を、日本人にわかりやすく説明するには、日本語との違いや、間違えやすい点を教えられる日本人講師のほうが、英語のネイティブスピーカー講師より適しています。

一方、英会話学校は、英語でのコミュニケーション能力を身に付けることを目的にしています。そのためには、本物の発音やスピード、表現に触れることが効果的なので、英語のネイティブスピーカーも多数在籍します。日本語がまったくできない講師も珍しくはありません。

教室の雰囲気

英語塾の教室の雰囲気は、学校に似ています。館内に自習室が設けられているところが多く、授業の前後には自習ができます。

英会話学校の教室の雰囲気は、オープンでカジュアルなことが多いようです。会話を楽しむことが重視されていることもあり、生徒同士で談笑できるスペースが設けられています。

また、前の項で説明した通り、講師に英語のネイティブスピーカーが多いため、海外にいるような気分を味わえる環境といえます。

サポート体制

英語塾では、学校の課題や自習のやり方、効率的に学習できる問題集や参考書などを助言してくれます。なかには、目標にしていた点数や資格が取れなかった場合、授業料を返金する制度などを設けている塾もあります。

英会話学校では、レッスン以外で講師からアドバイスをもらうこともありますが、それほど多くありません。

子どもが英語を学ぶなら英語塾?英会話教室?

子どもが英語を学ぶなら英語塾?英会話教室?

子供が英語を学ぶところとして、英語塾と英会話教室のどちらが適しているか、考える方もいるでしょう。結論からいうと、子どもの年齢によって異なります。

英語塾、あるいは英会話学校・教室がどのような役割を果たせるのか、小学生から高校生までのそれぞれの段階ごとに説明しましょう。

小学生に向くのは英会話教室

小学生に勧めたいのは英会話教室です。

この年齢の子供には、「英語は楽しい」というイメージをもたせることが最優先です。本人がさほど乗り気でないのに、無理に英語を勉強させると、苦手意識がついてしまうこともあるため、注意してください。

また、小学生は「英語耳」を育てるのに向いた時期です。

「英語耳」とは、英語の音を日本語の音と区別して聞き取る力のことで、7歳~9歳ごろがピークといわれています。しかし、適応能力が高い小学生なら、10歳以降でも「英語耳」は育ちます

小学生には、まず英語を楽しむ機会を与え、本物の英語に触れる場を作りましょう。

英語学習が有利になる「英語耳」ー英語の発音をしっかりと聞き取れるリスニング能力ーについては、次の記事がわかりやすく説明しています。

中学生には英語の得意・不得意で選ぶ

中学生は、英語に苦手意識をもつ子が増える時期です。

小学生の授業では、楽しむことがメインだったのに、中学校の授業では、一気にいわゆる「お勉強」になるからです。また、定期試験などで自分の英語能力は逐一数値化されてしまうので、苦手意識が加速することも考えられます。

もし子供が英語が苦手なら、英語塾を検討するのもいいでしょう。高校受験対策にもなります。

英語が得意な子なら、英会話学校でさらに磨きをかけるのもよい方法です。学校の勉強を越えて、コミュニケーションの手段としての英会話力を身につけることができるでしょう。

たとえば、「塾」は英語ではなんというのでしょうか。教育制度は国や地域によっても違い、また単語の意味する内容も、アメリカとイギリスでは同じではありません。

次の記事では、その点を踏まえつつ、日本の「塾」を英語で表現しようと試みています。「コミュニケーションの手段としての英会話力」の一端を知ることができると思います。

 

 

英会話を学ぶなら「オンライン英会話」も選択肢

英会話学校・教室に通うほかに、インターネットで英会話を学ぶ「オンライン英会話」という方法もあります。

好きな時間に好きな場所からレッスンが受けられるので、英会話学校に比べて続けやすく、費用も安価な利点があります。

部活動などの課外活動で忙しかったり、近くに通いやすい英会話学校がない場合には、オンライン英会話も選択肢のひとつです。

次の記事では、新しい学習指導要領で中学校の英語の授業がどう変わったのか、オンライン英会話は新学習指導要領後の英語学習をどう支えるのか、などを紹介しています。

高校生には目的で選ぶ

高校生にもなると、将来の進路を具体的に考え始めます。就職する子もいるかもしれませんし、希望の大学をめざして受験勉強を始める子もいるでしょう。

大学受験では、文系志望であろうと、理系志望であろうと、英語は必須科目です。最近では英語資格保有者が有利になることもあるため、英語の勉強は欠かせません。

たとえば、日本ではもっとも普及している英語の資格として、実用英語検定(英検)があります。大学入試や単位の認定にどのように役立つか、英検協会は「英検のメリット・特徴」のうちのひとつとして、次のように説明しています。

使える英語の4技能が評価され、英検取得者は多くの高校・大学の入学試験や単位認定で活用されています。

出所 英検について(公益財団法人日本英語検定協会)

大学受験対策には英語塾がおすすめです。しかし、「海外の大学に留学したい」や「グローバルな会社で働きたい」といった希望がある場合、英会話学校でより実践的な英語力を身につけるのは大きなプラスになります。

高校の英語の授業も、中学校と同様、新しい学習指導要領で大きく変わりました。次の記事では、新しい学習指導要領で中学校の英語の授業がどう変わったのか、そして「聞く」「話す」技能を伸ばすために英会話が必要な理由などを解説しています。

 

 

まとめ

本記事では、子供が学校以外に英語を学ぶ場として、英語塾や、英会話学校・教室などがあることを確認しました。

教科としての英語を学ぶ英語塾、会話力をつけることを目的にする英会話学校・教室のどちらで学ぶかを決められない場合、英語の得意・不得意や、英語を学習する目的を明確にした上で選ぶようにしましょう。

言語学習でもっとも大切なのは継続できることです。楽しく通える塾・学校を選ぶためには、入る前に体験レッスンを受けて、教室の雰囲気や内容を確認するとよいでしょう。

また、英会話を学ぶ方法としては、レッスンの時間と場所を選ばない、オンライン英会話もあります。

学研が提供する「オンライン英会話Kimini」は、日常的に英語を使うフィリピン出身の講師とのやりとりを通じて、実践的な英会話力を身につけることができるでしょう。学研が開発した教材を元にしているので、文法や語彙の知識も増え、英会話学校・教室よりもリーズナブルに受講できる利点があります。

子供が英語好きになるように、そして英語が得意な科目になるように、英語を学びたいと思ったときに、ぴったり合う方法を選んで、英語の力をつけられるといいですね。