“May I help you?”の直訳は「何か手伝えることはありますか?」ですが、ホテルやお店などでスタッフがお客様に対して声をかけるときの「いらっしゃいませ」として覚えている人もいるでしょう。
一方、”It may snow today.”は、「今日は雪が降るかもしれない。」と、”You may want to eat a apple. “は、「リンゴを食べてもよい。」と訳されます。
これらのフレーズに使われている”may”は、どれも助動詞なのですが、じつは助動詞”may”は「~してもよい」や「~かもしれない」だけでなく、ほかにもいろいろな意味を持っています。
助動詞”may”は、読解や訳はできても、いざというときなかなか使いこなせず意味を混乱してしまいがちです。
そこで今回は、わたしたちがいまいち理解できていないであろう助動詞”may”の意味と使い方をコアイメージとともに解説していきます。
助動詞”may”のコアイメージ
“may”ってどんなときにどうやって使えばいいの?と困った経験はありませんか?
訳がたくさんあるうえに、なんだかどの意味もふわっとしていて、正直よくわからないというのが本音ではないでしょうか?
日本語訳が多くて、前後の文脈から単語の意味を判断できないときや、実際にどういう使い方をすればいいかわからないというときは、単語の語源から考えてみるとわかりやすいです。
助動詞”may”の語源は、古英語の”mæg”(~する力がある)といわれています。
インド・ヨーロッパ祖語の”magh-“(能力がある、力を持つ)にも関連しており、かつては「予測の補助」を表す語として使われていました。
「~する力がある」を英語にすると、”have power”(力を持つ)となります。
助動詞”may”のコアイメージは、この”have power”(力を持つ)であるとまず覚えておきましょう!
日本語の意味や使い方を調べるときに国語辞典を引くように、英単語も正しい訳や例文を調べるときは、英英辞典を使うのがおすすめです。
“may”は、英英辞典で以下のように定義されています。
- used to express possibility
可能性を表すときに使用する- used to ask or give permission
何かをお願いしたり、許可をもらったりするときに使用する- used to introduce a wish or a hope
願いや希望を伝えるときに使用する
おもな意味は許可、可能性、願望であることがわかります。
語源から考えたコアイメージと上記3つの定義を軸に、”may”の意味と使い方を詳しくみていきましょう。
助動詞”may”が持つ3つの意味
助動詞”may”の意味は、”have power”(力を持つ)を主軸に考えていくと理解しやすくなります。
英英辞典に載っていた3つの意味を”have power”(力を持つ)の観点から解説していきます。
推量「~かもしれない」
助動詞”may”の1つめの意味は、”express possibility”(可能性を表す)でしたね。
日本語では「~かもしれない」と訳される場合が多く、”maybe”(多分)という英単語から、”may”=「~かもしれない」と覚えている人も少なくないでしょう。
“possibility”を表す”may”の可能性は、五分五分つまり「どちらとも言えない」程度の確率であるといえます。
話し手が”have power”=力を持っているがゆえに、50:50の可能性があると考えられるでしょう。
【例文】
It may rain today.
訳)今日は雪が降るかもしれない。
Charlotte may come later.
訳)シャーロットは後から来るかもしれない。
William may or may not pass the exam.
訳)ウィリアムが試験に受かるか否かはわからない。
Jane may join the tennis club.
訳)ジェーンはそのテニスクラブに入るかもしれない。
推量「~かもしれない」の意味から派生したものに、「たとえ~であっても」と譲歩を表す用法もあります。
通常”may ~ but …”の形で使われ、「~かもしれないが、…だ。」「たとえ~であっても…だ。」という意味になります。
話し手の本心や意見は、”but”以降に否定的な内容が伴った文で述べられます。
譲歩の使い方も、コアイメージの”have power”(力を持つ)をヒントに考えるとスムーズです。
話し手が力を持っているがゆえに、50:50の可能性があることを前提に、可能性を一旦は認めつつも否定するため、100%否定する意味にはなりません。
日本語の「百歩譲る」「妥協する」「歩み寄る」といったニュアンスに近いでしょう。
【例文】
Daniel may love Grace, but she can’t be with him.
訳)ダニエルはグレースを愛しているかもしれないが、彼女は彼と一緒にはなれない。
James may be rich, but he is not kind at all.
訳)ジェームズはお金持ちかもしれないが、全然優しくない。
I may be wrong, but Emily seems more reliable than David.
訳)わたしが間違っているかもしれないが、エミリーのほうがデイヴィッドより信頼できそうだ。
It may sound strange, but it’s true.
訳)おかしく聞こえるかもしれないけれど、本当のことなんだ。
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許可「~してもよい」
続いては、助動詞”may”の2つめの意味「許可」について解説します。
英英辞典には、”ask or give permission”(お願いする、許可を与える)とありました。
許可を表す”may”は、基本的に上の立場から下の立場へ向かって「~してもよい」と許可を与えるとき使われます。
上司と部下、教師と生徒、親と子のように力関係(上下関係)が明らかな場合に、力を持っている話し手が相手へ許可を与えるのをイメージするとよいでしょう。
【例文】
You may sit here.
訳)あなたはここに座ってもよい。
You may go home now.
訳)あなたは家に帰ってもよい。
「~してもよい」の意味で使う”may”は、自分が上の立場だと言っていることになるので、相手に失礼にあたる場合があり、使う場面と相手には注意が必要です。
そのため、許可の”may”は、「~してもよいですか?」のように疑問文で使われることが多いでしょう。
話し手が相手に許可を求める内容なので、自然と相手が上で自分が下というへりくだった言い方になります。
丁寧で控えめな謙譲表現として、フォーマルシーンやビジネスシーンなどかしこまった場面に適しています。
【例文】
May I ask some questions?
訳)いくつか質問してもよろしいでしょうか。
May I take a day off tomorrow?
訳)明日、お休みをいただいてもよろしいでしょうか。
May I have your name, please?
訳)お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。
“may not”は、かなり強い禁止の意味合いになり、上下関係を意識させる表現のため、日常会話で使われることはほとんどありません。
法律文書や公共施設の注意書きなどを除き、禁止事項には”must not”を用いるのが一般的なので覚えておきましょう。
【例文】
Visitors may not feed the animals.
訳)来場者は、動物にえさをやってはいけません。
You may not use flash while taking pictures in this museum.
訳)この博物館では、フラッシュ撮影は禁止されています。
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祈念「~でありますように」
最後に紹介するのは、「~でありますように」と祈念を意味する”may”です。
格式ばった言い方なので、日常会話での使用頻度は先に述べた2つよりかなり低いのが特徴です。
“have power”(力を持つ)というコアイメージから、力を持つ話し手ではどうしようもできないことに対して、実現を望んだりお願いしたりすると考えてみましょう。
祈念を表すときの”may”は、必ず文頭に置かれ、グリーティングカードのメッセージや書き言葉として使われることが多いですよ。
【例文】
May god bless you.
訳)神様のご加護がありますように。
May you have a wonderful Christmas!
訳)素敵なクリスマスを過ごせますように!
May you and your family be healthy and happy!
訳)あなたとご家族みんなが健康で幸せでありますように!
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まとめ
助動詞”may”の意味と使い方をコアイメージとともに解説しました。
訳がいくつもあって難しい”may”は、”have power”(力を持つ)というコアイメージを軸に意味を考えるとわかりやすいです。
力を持つがゆえに可能性を述べる推量(~かもしれない)、力を持っている話し手が上から下へ与える許可(~してもよい)、そして持っている力が及ばないことに対する祈念(~でありますように)、3つの違いをしっかり理解しておいてください。
なお、”may”は相手と自分の上下関係を意識させてしまうということを忘れずに、正しい使い方をマスターしていきましょう。