「〇〇のディレクション」「ディレクション業務」など、ビジネスシーンでは「ディレクション」という言葉をたびたび耳にします。
「ディレクション」は、英語由来のカタカナ言葉で、とても頻繁に使われてはいるものの、どういう意味を表すのか、的確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。
聞いたことはあっても、「ディレクション」の意味がわからないので、実際には使いこなせていないという人もいるかもしれません。
今回は、いまさら聞けないカタカナ言葉「ディレクション」について、英語”direction”の意味と使い方、言い換えできる類義語を解説していきます。
「ディレクション」の意味
「ディレクション」は、英語の”direction”をカタカナで表記した言葉です。
辞書では、「方向」「指示」「指揮」「管理」などさまざまな意味が記載されています。
- 方向、方角、方位、方面
- 思想などの傾向、動向、動き
- 指揮、指導、監督、管理
- 指示、指図、命令
- 指図書、説明書、使用法
- 演出、監督
参考:Weblio辞書
「方向」「指示」「命令」などの意味を持つ「ディレクション」は、おもにビジネスシーンでよく使われているカタカナ言葉です。
ビジネスにおける「ディレクション」には、以下のような業務があり、Web業界や広告業界をはじめ、映像制作業界、出版業界など幅広い業界で必要とされています。
- プロジェクトの指揮、指導
- 制作物の企画、立案、管理
- 業務の進捗管理
- スタッフ、メンバーへの指示出し
- 社内外での交渉、ヒアリング
- トラブル、クレーム対応
「ディレクション」の業務を行う人物は、一般的に「ディレクター」と呼ばれます。
プロジェクト全体の監督的な役割を果たす非常に重要な存在で、次のような高いスキルが求められます。
- リーダーシップ
- スケジュール管理力
- マネジメント能力
- コミュニケーション能力
- 判断力、決断力、問題解決力
うまく「ディレクション」していくには、メンバーを引っ張っていくリーダーシップと、高いマネジメントスキル、また社内外の人とうまくやっていくためのコミュニケーションスキルが必要です。
トラブルへの対処や対策も求められるため、もちろん論理的思考力も欠かせません。
プレッシャーや責任感に強く、周囲からの信頼の厚い人物は、「ディレクション」の業務に向いているといえるでしょう。
「ディレクション」の使用例
『新しいプロジェクトのディレクションは、彼に任せることになった』 『ウェブコンテンツ作成について、詳細なディレクションを受ける』 『ディレクションを行い、デザインに何度か修正を依頼した』 『ディレクション業務は、わたしにとって非常にやりがいがある仕事だ』 『ディレクションスキルに定評があるので、リーダーに抜擢された』 |
「ディレクション」と「プロデュース」の違い
「ディレクション」と似ているカタカナ言葉に、「プロデュース」があります。
「プロデュース」は、番組や動画、Webサイト、雑誌などのコンテンツなどを企画または制作することを意味します。
ディレクション | 現場の指揮、指導、進捗管理 |
プロデュース | 人事や経理や企画などの総合的な管理、統括 |
「プロデュース」のもとになっている英語”produce”には、「生産する」「製造する」「作り出す」のほかに、「結果をもたらす」「提示する」などの意味が含まれています。
「プロデュース」のおもな業務としては、企画の立案やスポンサーとの交渉、資金調達、予算管理などがあります。
「ディレクター」と「プロデューサー」は、業務内容で被っている部分もありますが、どちらかというと、「ディレクター」よりも「プロデューサー」の方が上の立場である場合が多いでしょう。
”direction”の意味
「ディレクション」は、英語の”direction”に由来したカタカナ言葉です。
”direction”は、「方向」「方角」「指示」「命令」などの意味を持っています。
”position”や”instructions”、”control”、”orders”といった単語からも、文脈によっていろいろな解釈ができることがわかります。
- the position towards which someone or something moves or faces
誰かまたは何かが移動する、または向いている位置- instructions that you give to someone about how to find a particular place
特定の場所を見つける方法について誰かに与える指示- control or instruction
管理または指示- information or orders telling you what to do
何をすべきかを指示する情報または命令
ビジネスシーンだけでなく日常会話でもよく使われる”direction”は、道を尋ねたり案内したりするとき、製品の仕様書や説明書などを表現するときなどにも使われています。
”direction”の発音記号は、アメリカ英語が /dɪˈrek.ʃən/、イギリス英語は /daɪˈrek.ʃən/です。
イギリス英語はカタカナで「ダィレクション」と読み、日本語で使われている「ディレクション」とは若干異なります。
いずれも、英語とカタカナ言葉では発音が違うため、英会話では正しく発音できるようになっておくことが大切です。
”direction”を使った例文
「方角」「指示」「方針」など、さまざまな意味を持つ”direction”。
それぞれの意味に合った使い方を例文で確認してみましょう。
方向・方角・向き・道順
訳)頂上からは、どこまでも見渡すことができました。
訳)2人は逆方向に走り去りました。
訳)彼はひどい方向音痴で、いつも道に迷っていました。
訳)女性に尋ねると、最寄りのバス停までの行き方を教えてくれました。
指示・指導・方針・命令
訳)わたしには、その説明がまったく理解できませんでした。
訳)メーカーの指示はたいていとてもわかりやすいものです。
訳)プロジェクトの方向性については意見が分かれています。
訳)この決断が、私たちの人生が進む方向を決めるかもしれません。
”direction”の類義語
文脈によって解釈が異なり、幅広い意味を持っている”direction”は、ほかにもいろいろな英語に言い換えられます。
”direction”の類義語を例文で紹介します。
way
”way”は、「道」や「通り」を表す最もよく知られている英語ですが、「考え方」のニュアンスで「方向性」「方面」「方法」「手段」といった意味も持っています。
訳)彼がわたしに謝るべきであって、その逆ではありません。
course
”course”は、「進路」「コース」「進行」「推移」「過程」などの意味を表す英語です。
学習プログラムや授業を表すことが多いですが、特定の方向に進む行為を指して使われることもあります。
訳)ライバル社が広告費を多く使っているのなら、当社も同じ道を歩まなければならないでしょう。
management
”management”は、「経営」や「管理」を意味する最も一般的な英語です。
企業や団体の運営方針や具体的な経営手法などを指して使われます。
訳)より厳格な財務管理が必要です。
guidance
”guidance”は、「案内」「指導」「手引き」「指図」「助言」といった意味を持つ英語です。
教師が生徒に、親が子どもに、上司が部下に、のように、誰かが他の人を手助けすること、正しい方向へ導くことを表現するときに使われます
訳)このような問題に関しては、わたしはいつも父の指導を仰いできました。
surveillance
”surveillance”は、「監視」「見張り」「監督」などを意味しています。
人や場所を注意深く観察することを指しており、警察の監視や企業のセキュリティに関する表現に用いられることが多い単語です。
訳)監視カメラを設置する銀行が増えています。
supervision
”supervision”は、「監督」「管理」「指導」を意味する英語です。
人や活動を注視して見守り、うまく管理することを指しています。
訳)教師の監督下にない限り、生徒はこれらの化学物質を扱うことはできません。
まとめ
聞き慣れてはいるものの、よくわかっていないカタカナ言葉「ディレクション」について、英語”direction”の意味と使い方、言い換えできる類義語を解説しました。
ビジネスシーンで多用されているカタカナ言葉は、正しい意味を理解していないと、思わぬ誤解を招きかねません。
「ディレクション」や「プロデュース」のように、似ているようで意味の異なる言葉は、ほかにもたくさんあるでしょう。
今回紹介した類義語は、「ディレクション」の語源になっている”direction”の正確な意味と用法を理解する助けになってくれるはずです。
英単語は、カタカナの使用に惑わされず、本来の意味を改めて確認して正しく使いこなせるようになりたいですね。
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