「デラシネ」という言葉を聞いたことがありますか?ミステリー小説やゲームのタイトルとして使われることもある言葉です。
耳にしたことはあっても「デラシネ」の意味や、どこから来た言葉なのかを知っている方は少ないのではないでしょうか?

そこで、今回は、「デラシネ」の意味やその由来をご紹介します。「デラシネ」の英語表現もいくつかご紹介するので、ぜひこの機会にマスターしてくださいね。

デラシネはフランス語

デラシネはフランス語

デラシネは、実はフランス語。「根を引き抜く」という意味の動詞“déraciner”から派生した言葉で“déraciné”と書きます。

déraciné”は、物理的に根を引き抜かれた「植物や木」を意味します。植物だけでなく、人間に対して使われることもあり、その場合は、社会や文化的な根から切り離された「人」という意味になります。具体的には、異国や新しい環境で暮らす移民や放浪者に対して使われます。

déraciné”の日本語訳としてもっともしっくりくるのは「根無し草」でしょう。日本語の「根無し草」にも植物の意味だけでなく、「住所、職業、考え方などに定まったところがないこと」や「あてもなく漂っているような生き方をしている者、はかない者」という意味もありますね。

英語で「デラシネ」はどう表現する?

英語で「デラシネ」はどう表現する?

déraciné”の英語表現を確認しましょう。植物の「根無し草」の表現と、人の「根無し草」の表現に分けてご紹介します。

植物の『根無し草』

根がない植物「ウキクサ」は”duckweed”といいます。”duck(アヒル)” と“weed(雑草)”の組み合わせでわかるように、「ウキクサ」はアヒルが食べる水生植物です。アヒルのいる池や川の水面に漂う「ウキクサ」を目にしたことのある人も多いのでは?

Aさん
The pond was completely covered in duckweed, making the water appear green.
池はウキクサで一面が覆われ、水が緑色に見えた。
Aさん
Ducks were swimming through the duckweed, searching for insects and plants to eat.
アヒルたちはウキクサの中を泳ぎながら、昆虫や植物を探していた。
Aさん
The rapid growth of duckweed can sometimes block sunlight from reaching other aquatic plants.
ウキクサの急速な成長は、時に他の水生植物に日光が届かなくすることがある。

人の『根無し草』

「デラシネ」のような人を意味する表現は英語にもいくつかありますが、それぞれニュアンスが微妙に異なります。代表的な英語の表現を例文と一緒にご紹介します。

uprooted

uprooted“は「根こそぎにされた」という意味。”uproot“「根こそぎにする」という動詞から派生した単語で、植物と人間両方に使うことができます。植物に使うと「土から引き抜かれた」状態、人間に使うと「生活基盤を奪われた」「故郷を追われた」状態を表します。

Aさん
He felt uprooted after moving to a new country.
彼は新しい国に引っ越してから根無し草のように感じた。
Aさん
She felt uprooted after leaving her job of 20 years and moving to a new city.
20年間働いた職場を離れて新しい街に移り住んだ後、彼女は根無し草のように感じた。
Aさん
The refugees were uprooted from their homeland.
難民たちは故郷から追われて根無し草になった。

displaced

displaced“は「追放された、住むところがなくなった」という意味です。人が強制的に住む場所を失ったり、社会の中で居場所を失った状態を指します。

Aさん
He felt displaced in the bustling city life.
彼は忙しい都会での生活の中で疎外された気分だった。
Aさん
Many families were displaced by the natural disaster.
多くの家族が自然災害で住む場所を失った。
Aさん
The displaced villagers struggled to find new homes.
追放された村人たちは新しい家を見つけるのに苦労した。

rootless

rootless”は「根のない、根無し草の、社会的に足場のない」という意味で、精神的な拠り所がない状態を指します。

Aさん
Living abroad made him feel rootless.
海外での生活は彼に根無し草のような気分をもたらした。
Aさん
Many expatriates feel rootless in a foreign land.
多くの国外居住者が異国の地で根無し草のように感じている。
Aさん
She grew up in a rootless lifestyle, always moving from place to place.
彼女はいつもあちこちを転々とし、根無し草のような生活の中で育った。

nomadic

nomadic”は「遊牧的、放浪者の」という意味です。移動し続けるライフスタイルや、固定の場所に住まない状態を表します。
ちなみに名詞は”nomad”。特定の場所にこだわらずに場所を移動しながら働く人のことを「ノマドワーカー」といいますが、これは遊牧民を意味する”nomad”と働く人”worker”を組み合わせたことばです。

Aさん
The artist led a nomadic life, traveling from city to city.
そのアーティストは都市から都市へと移動する遊牧的な生活を送っていた。
Aさん
Her nomadic childhood, moving from one country to another, made it difficult for her to form lasting friendships.
遊牧民のような幼少期を過ごし、国を転々としたため、彼女にとって長続きする友情を築くことは難しかった。
Aさん
Her nomadic lifestyle meant that she rarely stayed in one place for more than a few months.
遊牧民のような生活をしていた彼女は、ひとつの場所に数ヶ月以上滞在することはほとんどなかった。

alienated

alienated”は 「疎外された」という意味です。社会や周囲から切り離され、自分の居場所を感じられない状態を表現します。

ちなみに“alienated”は、「エイリアネイティド」という発音からもわかるように宇宙人を表す「エイリアン」の関連語。”alien”には「なじみがない、相容れない」という形容詞の意味もあります。

Aさん
He felt alienated from his new coworkers.
彼は新しい同僚たちから疎外されていると感じていた。
Aさん
He struggled with feelings of being alienated in his hometown.
彼は故郷で疎外された感情に苦しんでいた。
Aさん
Many teenagers feel alienated from their parents during the rebellious phase of adolescence.
10代の若者の多くは、反抗期に両親から疎外されたと感じる。

まとめ

今回は「デラシネ」についてご紹介しました。「デラシネ」はフランス語で「根無し草」を意味します。英語ではニュアンスごとに”uprooted”や“rootless”、”nomadic”などの言葉があり、使い分けると、さまざまなニュアンスを表現できるようになります。ぜひ、これらのフレーズを身につけてくださいね!

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