芸能ニュースなどで、「芸能人が”一般人”と結婚」などと報じることがあります。この「一般人」を英語ではなんというのでしょう? 英語では、有名人や芸能人と、そうではないひとたちのことを区別するのでしょうか。

この記事では、「一般人」という英語の使い方を改めて掘り下げて考えてみます。

「一般のひと」「一般人」って英語でなんという?

「一般人」はどういうひとを指すか

そもそも、「一般人」にはどのような意味があるのでしょうか。まずは辞書の定義で確めてみましょう。

いっぱん‐じん【一般人】
特別の身分や地位をもたない人。また、あることに特別の関係がない人。普通人。
「一般人」デジタル大辞泉

英語での「一般人」の言い方

有名人や芸能人に対して、有名ではない人びとのことを、アメリカやイギリスなどの英語圏でも「一般の人」「一般人」とよびます。

「一般のひと」のことを、英語では以下のように表現します。

・an ordinary person (複数形は ordinary people)

ordinaryは普通の、通常の、並の、平凡な」という意味をもつ形容詞です。

・common person (複数形は common people)

commonには「共通の、公共の」という意味があります。

この場合は「特別の身分ではない、名も位もない」といった意味の形容詞です。

・regular person (複数形は regular people)

regularには「定期的な、正規の」などといった意味があります。

この場合は「普通の、標準的な」といった意味の形容詞です。

上記の例では、person (ひと)を “folks” (人びと)という単語に置き換えて使うこともできます。

著名人に対する「一般人」の例

たとえば、「セレブ」(celebrity セレブリティ)に対する「一般人」は、次の例文のように使えます。

Aさん
Why do these celebrities live in this mountain area?
訳)どうしてこれらのセレブたちは、この山のエリアに住んでいるの?
Bさん
Because they sometimes have difficulty living normally, unlike ordinary people. So they chose to live in a place where they can protect their privacy.
訳)なぜなら、彼らは一般人とは違って普通に生活をするのが難しいからだよ。だから、自分たちのプライバシーが守られる場所で生活することを選んだんだよ。

お金持ちに対する「普通のひと」の例

また、「お金持ち」や「貴族」など、なかなかなれない身分の人がいます。
それ以外の人と区別する場合にも、英語で「一般のひと」という言い方を使います。
Aさん
I can’t afford this because I’m just an ordinary person.
訳)僕はただの普通のひとだから、こんなものは買えないよ。
Bさん
No way! I thought you were rich enough to buy this!
訳)いやいや!君はこれを買えるくらいお金持ちだと思ったけど!

 

「平凡なひと」「庶民」は英語でどう言う?

「平凡な人」「庶民」は英語でどう言う?

いわゆる「凡人」「平凡なひと」、そして「庶民」に当たる英語の表現は以下の通りです。
・an average person
average は「平均的な」という意味の形容詞で、「並の、普通の」といった意味があります。
“an average person”で「平均的なひと」「庶民」などという意味になります。
・a mediocre person
mediocre は「並の、平凡な」という意味の形容詞です。
“a mediocre person” は、文字通り「平凡なひと」という意味です。
Aさん
I heard your sister works for that big international company. She must be very rich.
訳)君のお姉さんは、あの大きい国際的な会社で働いていると聞いたよ。とってもお金持ちなんじゃないかな。
Bさん
I don’t think so. She is just a mediocre person.
訳)そんなことないと思うよ。姉は平凡なひとだよ。

 

また、このような言い方をすることもできます。

I am just a man.
私はただのひとだ。
自分は「凡人」だ、という意味を含ませることができます。

最近の報道からの事例

最近の例では、秋篠宮家の眞子(まこ)内親王の婚約から結婚に至るまでの経過は、海外でも大きく報じられました。

 

王室をもつイギリスでもこの話題は関心をもたれたようで、2021年10月のBBCの報道「日本のプリンセス・マコ:結婚のために皇族の地位を放棄した女性」では、日本の女性皇族が結婚後に立場が変わることについて、次のように説明しています。

 

It meant the princess would become an ordinary citizen, as female imperial family members forfeit their royal status upon marriage to a commoner.

“Japan’s Princess Mako: The woman who gave up royal status to marry”, BBC, 26 October 2021.

 

「それは、皇族の女性は民間人と結婚すると皇族の地位を失うため、内親王が一般市民になることを意味した。」という主旨で、

  • an ordinary citizen (一般市民)
  • a commoner (民間人)
という表現で、前者では皇族を離脱すること、後者では皇族ではない配偶者の立場を説明しています。

「一般ピープル」は英語でなんという?

日本では、庶民や一般のひとのことを「一般ピープル」というくだけた言い方があります。もともとは、お笑いタレントのルー大柴さんが、日本語と英語を混ぜておもしろおかしく言ったことが始まりです。

以後「一般ピープル」は「パンピー」などと省略されるようになり、平成初期には周知されるようになりました。

英語では、そんなおもしろい言い方は特にありません。先ほど出てきたような ”ordinary people”、”general people”などという程度です。

“ordinary”と”common”の違い

"ordinary"と”common"の違い

前の項で、「一般人」は “ordinary people” や “common people” といえることを紹介しました。しかし、”ordinary”と “common”ではニュアンスに違いがあります。その違いについて詳しくみていきましょう。

”ordinary”の使い方と例文

“ordinary”は「別段、特別でも意外でもない」という意味で、一般的なものや普通に期待されることを指します。

次に紹介するのは、”ordinary”を使った文例です。

Aさん
He is an ordinary person leading a normal life.
訳)彼は普通の生活を送っている一般人だよ。

Bさん
Really? He was an ordinary student, but he has been an elite business person since he got a job at a large company.
訳)本当? 彼は平凡な生徒だったけど、大企業に就職して以来、エリートビジネスマンだよ。

“ordinary”を使ったイディオム

次に、”ordinary”を含むよく使われるイディオムと、その使い方の例です。

  • under [in] ordinary circumstances 一般的な状況下では

Aさん
Under ordinary circumstances, daily necessities are easily distributed, but they were not during the wartime.
訳)一般的な状況下では、生活必需品は円滑に流通しているが、戦時中は流通していなかった。

  • out of the ordinary  尋常でない、並外れている

Aさん
If you notice something out of the ordinary in a train, please notify a station staff.
訳)電車内で何か異常に気付いたら、お知らせください。

“common”の使い方と例文

これに対して”common” には、広く普及していて、普遍的・一般的であるというニュアンスがあります。

多くの場所において、または多くのひとにとって同じく、共通しているという意味合いで使われます。”common”を使った例文は以下の通りです。

Aさん
It’s common knowledge that the work at senior care centers is often underpaid, precarious and inequitable.
訳)高齢者介護センターでの仕事が、低賃金、不安定、不公平であることは、一般的に知られた知識である。

Aさん
The new product is so common among Japanese young people that most of them know about it.
訳)その新製品は日本の若者の間でとても普及しているので、彼らのほとんどがその製品を知っている。

“common”を使ったイディオム

次に”common”の入ったよく使われるイディオムと、その使い方の例です。

  • in common 共通の

Aさん
Bill, we have so much in common.
訳)ビル、わたしたちって共通点がたくさんあるよね。

Bさん
Yeah. We like the same kind of food and play the same kind of video games.
訳)そうだね。僕たちは同じような食べ物が好きで、同じようなビデオゲームをするね。

 

「一般人」の反対は?「有名人」?

「一般人」の反対は?「有名人」?

「一般人」の反対は、「有名人」「著名人」などといわれています。

ちょめい‐じん【著名人】

世間に名の知られた人。有名人。

「著名人」精選版 日本国語大辞典

名が知られているかどうかは別に、特別な才能をもっていることに関していうなら「天才」「超人」などということもできます。

 

英語では「有名人」「著名人」をこのように表現します。

・a famous person

”a famous person”は文字通り「有名なひと」という意味です。

・a public figure

”a public figure”は「公の人物」という意味です。政治家など著名人などを指すのにアメリカでよく使われます。

・a celebrity (a celeb)

”a celebrity”(セレブリティ)は、世界的に有名で、お金持ちのひとを指すことばです。日本ではよく「セレブ」という略したかたちで使われていますよね。英語でも省略して「a celeb」とよぶこともあります。

他には、

・big names

”big names”はプロのスポーツ選手や大御所など、「大物」として名を馳せているひとのことを指します。必ずしも年齢が高いわけではないこともあります。

・well-known faces

”well-known faces”は、「よく知られたひと」などともいいます。

 

たとえば「世界的に有名なお金持ち」”a celebrity(celeb) “はこのように使います。

Aさん
I heard some celebs are attending this event.
訳)このイベントには何人かの著名人がくると聞きました。
Bさん
Yes. Here is the entrance for the celebrities.
訳)そうよ。ここが有名人用の入り口よ。

 

「よく知られた人」well-knownを使った例文はこちらです。

Aさん
I can see so many well-known faces on the stage.
訳)ステージに沢山の有名人がいるのが見えますね。

重要な職・立場にある「重要人物」

日本語でも使われる「VIP」

また、ことに政治家・企業人など、要職にあるひと、要人をVIPといいます。”very important person” を省略したことばです。

これが転じて、「一般人」では得られない、特別な扱いを受ける人びとのことも”VIP”というようになり、「VIP席」「VIP待遇」などの使い方もされています。

Aさん
These are the seats for VIP members.
訳)これらは、VIPメンバー専用の席です。

「大きなチーズ」は重要人物

類似の表現に”the big chees”(大きなチーズ)があります。
the big chees:a most powerful or important person
Merriam-Webster
アメリカの代表的な辞書『ウェブスター辞典』によると、”the big chees”は「影響力のある、重要な人物」を指します。これは昔、チーズが高価で価値あるものだったことに由来すると考えられています。

「大きな犬」の責任者

ある部署・部門を預かる責任者のことを、”top dog”、”big dog”ということがあります。

実際に起きた冤罪を題材に製作された”The Fugitive”(邦題『逃亡者』)は、何度もリメイクされている映画史に残る名作です。ハリソン・フォードが主演した1993年の作品”Fugitive”には、こんな一節があります。
Aさん
Don’t ever argue with the Big Dog. The Big Dog is always right! (ボスと議論しようとするな。ボスはいつだって正しいんだからな!

妻を殺した容疑をかけられた主人公、外科医リチャード・キンブル (Richard Kimble)を追う、連邦保安官補サミュエル・ジェラード(Samuel Gerard)が部下に向かっていうセリフです。

 

芸能・スポーツの「スター」

そのほか、有名人のなかでも、芸能人やスポーツ選手については、このような言い方もします。

・a superstar

”a superstar”は、スポーツ選手や歌手、俳優業などでかなり有名なひとのことを指します。

・a pop star

”a pop star”は、より具体的に「ポップミュージックで有名なひと」のことです。

・a movie star

また、俳優業で有名なひとを “a movie star”とよびます。

Aさん
He is a superstar. So we have to treat him as such.
訳)彼はスーパースターだ。だからそのように扱わなければならない。
イギリスのロック歌手、ジョージ・マイケルに”Star people”という作品があります。
Star people
Counting your money until your soul turns green
Star people
Counting the cost of your desire to be seen
音楽の世界でスターとよばれる人びとを風刺したもので、この後に” I do not count myself among you”(僕はあなたたちと一緒じゃない)と続きます。
「スター」も、必ずしも肯定的な意味ではないということでしょうね。

Hollywood Walk of Fame

 

アメリカ、ロサンゼルスにある Hollywood Walk of Fame (ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム)は、ハリウッドの観光名所のひとつです。

世界的な映画の街ハリウッドにふさわしく、この広場には、世界的に有名な歌手や俳優の名前の入ったプレートが歩道に埋め込まれ、手形・足形が展示されています。

 

アメリカで偉人や功労者を顕彰するために胸像や額を飾った場所のことを、Hall of Fame(栄誉の殿堂)といいます。それに対して、Hollywood Walk of Fameでは、歩道 (walk) にプレートや手形・足形が展示されているわけです。

 

映画や音楽、テレビ業界で活動するひとにとって、その仲間に入ることは大変な名誉 (Fame)です。

2023年、ミュージシャンのYOSHIKIの手形・足形が、日本人として初めて Hollywood Walk of Fame に加わったことが報道されています。

ロサンゼルスに拠点を移して活動しているYOSHIKIは、これまでの音楽活動への貢献が評価されて、「日本の歴史におけるもっとも影響力のあるミュージシャンおよび作曲家」に選出されました。

「多才なひと」を表現するイディオム

「多才なひと」を表現するイディオム

冒頭で、「一般人」でないひとの例のひとつに「特別な才能をもっていること」を挙げました。スポーツ選手や芸能人にも、俗にいう「二足のわらじをはいた」ひとはいるものです。

こうした「多才なひと」に使うイディオムがあるので、紹介します。機会があったら、ぜひ使ってみてください。

A wearer of many hats

”wear many hats”(多くの帽子をかぶる)で、いろいろな仕事や役割をもっていることを表現します。アメリカの代表的な辞書『ウェブスター辞典』による説明です。

wear many hats: to have many jobs or roles
Merriam-Webster

この表現の起源は、19世紀半ばにさかのぼるといわれています。特定の職業人に帽子が与えられていた時代に由来するという説があり、異なる職業に就いていたひとたちは、文字通り、状況に応じて異なる帽子をかぶっていました。

この表現は、多くの仕事、役割、技能をもっているひとの意味で使われます。昨今ではセレブリティに「複数の才能をもっているひと」が少なくありません。たとえば、歌手兼ダンサー俳優など、多才な人物に対してこの表現が使われます。

Aさん
Madonna is truly a wearer of many hats.
訳)マドンナは本当に多才なひとだね。

まとめ

本記事では、「一般人」「一般のひと」の英語での表現を説明してきました。「一般人」は、英語でも、日本語と意味がほとんど同じで、また使い方も日本語と同様なので簡単なことがわかったと思います。

日常的な会話でも、テレビに出ているような有名人やスポーツ選手、芸能人の話をすることがあると思います。あるいは雑誌やインターネットの記事に、有名人の動静やゴシップが掲載されていることもありますよね。

そういうときに、”star”や”celebrity”、”a public figure”など「著名人」「有名人」を示す単語はよく出てきますので、覚えておくと抵抗なくニュースが読めますし、自分からも話題にもしやすいと思います。

英単語を覚えるこつは、その単語だけを機械的に暗記するのではなく、類語、対義語などをひとつのまとまりとして扱い、例文ごと記憶することです。せっかくですから、対になる「一般人」を指す単語と一緒に覚えて両方使いこなせるようにしておくと、話の幅が広がって、きっと役に立ちます。