2020年4月に学習指導要領が改訂され、小学校での英語が必修化されたことは記憶に新しいですね。
これまではなかった「外国語学習」と「プログラミング活動」という教科が追加され、新制度に疑問や不安を抱いている親御さんも多いのではないでしょうか。
わたしたちは当たり前のように小学校で6年間、中学校で3年間、計9年間の「義務教育」を受けていますが、海外をみてみると、日本とはかなり違いがあることがわかります。
ところで、この「義務教育」は、英語では何と言うか知っていますか?
教育=”education”ということは知っていても、「義務教育」は正しく言えないという人も少なくないでしょう。
今回は、「義務教育」を意味する2つの英語とともに、日本と海外の教育制度の違いも合わせて解説していきます。
「義務教育」は英語で何と言う?
「義務教育」を意味する英語は2つあります。
- compulsory education
- mandatory education
“compulsory”と”mandatory”はどちらも同じ「義務的な」「必修の」という意味を表した形容詞です。
英英辞書の意味を比較してみると、どちらも”by law or a rule”とあるように、法律や規則によって定められた必要不可欠なことを意味していることがわかります。
- compulsory
(of something) that must be done; necessary by law or a rule
規則や法律によってしなければならない、必要であること
- mandatory
made necessary, usually by law or by some other rule
法律やその他の規則によって通常、必要とされること
【例文1】
Education required by law or regulation is called “compulsory education”.
訳)法律で義務づけられている教育が「義務教育」だよ。
I heard that the duration and age of compulsory education varies from country to country.
訳)義務教育の期間や年齢は、国によって違うんだってね。
それぞれのニュアンスの違いをさらに詳しく解説していきましょう。
compulsory education
「義務教育」を意味する1つめの英語が”compulsory education”です。
やらなければならないと思われる事柄について使う一般的な英語で、ネイティブの会話でも頻繁に使われています。
“compulsory”は、「あなたのために必要」というニュアンスがあり、次に説明する”mandatory education”よりポジティブなイメージがあります。
“compulsory education”の例文を見てみましょう。
【例文1】
Education is compulsory up to the end of junior high school in Japan.
訳)日本では、中学校まで義務教育だよ。
The same. Attending high school is not compulsory in Canada.
訳)カナダも一緒。高校に通うのは義務じゃないんだ。
【例文2】
We need to buy everything, such as textbooks and other school supplies necessary for compulsory education.
訳)義務教育に必要な教科書やその他の学用品をすべて買い揃えなくちゃならないの。
It must be tough. It would be nice if compulsory education were completely free.
訳)大変だね。義務教育が完全に無償だったら良いのにね。
【例文3】
My son doesn’t want to study, and I’m not sure if he wants to go to high school. What should I advise him?
訳)息子が勉強したがらなくて、高校に行きたいかどうかもわからない。どうアドバイスしたらいいのかなあ。
Although high school is not compulsory education, it is often said that it is better to go to high school for the future.
訳)高校は義務教育ではないけど、将来のためには高校は出ていたほうが良いって言うよね。
mandatory education
「義務教育」を意味する2つめの目の英語が”mandatory education”です。
“mandatory”には、「規則やルールに従ってしなければならないこと」という意味合いがあり、必ず果たすべき絶対的な義務を表しています。
ニュアンスに微妙な違いはありますが、「義務教育」を表すほとんどの場合で、”compulsory”と”mandatory”は置き換えが可能です。
“mandatory education”も例文で確認してみましょう。
【例文1】
Mandatory education means parents have to make sure their children receive education.
訳)義務教育とは、親がその子どもに教育を受けさせなければならないことよね。
Exactly. Mandatory education is necessary. It would be the foundation for the children’s future.
訳)その通り。義務教育は必要不可欠で、それこそが子どもたちの将来の基盤になるんだ。
【例文2】
In poor countries, many children cannot receive mandatory education.
訳)貧しい国では、多くの子どもが義務教育を受けられないのよ。
We should be happy that we have mandatory education.
訳)僕らは義務教育を受けられることを幸せに思うべきだね。
【例文3】
My recent problem is that I worry too much about my daughter’s high school entrance exams, as she is not a good student.
訳)最近の悩みは、娘の高校受験が心配すぎること。彼女は勉強が苦手だから。
I wish Japan had a mandatory education system through high school like the States has.
訳)日本もアメリカみたいに、高校まで義務教育ならいいのにね。
日本と海外の「義務教育」の違いは?
日本では9年間の「義務教育」が定められていますが、海外では国や州によって年齢も期間も異なります。
諸外国と日本の「義務教育」の違いを一覧で比較してみました。
国名 | 義務教育期間 | 年齢 | 初等教育年数 |
アメリカ※ | 12年 | 6~18歳 | 4年 |
オランダ | 12年 | 4~16歳 | 8年 |
イギリス | 11年 | 5~16歳 | 6年 |
フランス | 10年 | 6~16歳 | 5年 |
スペイン | 10年 | 6~16歳 | 6年 |
ドイツ※ | 9年 | 6~15歳 | 4年 |
スウェーデン | 9年 | 7~16歳 | 6年 |
フィンランド | 9年 | 7~16歳 | 9年 |
韓国 | 9年 | 6~15歳 | 6年 |
中国 | 9年 | 6~15歳 | 6年 |
日本 | 9年 | 6~15歳 | 6年 |
フィリピン | 6年 | 6~12歳 | 6年 |
シンガポール | 6年 | 6~12歳 | 6年 |
※州によって異なる
アメリカやドイツでは全国共通の義務教育制度はなく、州や学区によって制度や期間が異なります。
また、日本でいうところの小学校の初等教育も、各国で4~9年までと年数に幅があることがわかりますね。
参考:諸外国の義務教育制度の概要 (mext.go.jp)
各国の義務教育年限 (mext.go.jp)
各国の「義務教育」について、以下の会話文を例に練習してみましょう。
【例文1】
Could you tell me about your country’s compulsory education?
訳)あなたの国の義務教育について教えてくれる?
In America, laws require children to receive compulsory education starting from age five to eight and end somewhere between ages sixteen and eighteen.
訳)アメリカでは、5歳〜8歳から16歳〜18歳の間に義務教育を受けることが法律で決まっているよ。
【例文2】
How long is compulsory education in France?
訳)フランスの義務教育期間はどのくらいなの?
Education is compulsory for children between the ages of 6 and 16.
訳)6歳から16歳までが義務教育期間だよ。
「義務教育」の英語はいつから?
日本の「義務教育」において、英語を教科として学び始めるのは小学校3年生です。
ヨーロッパやアジア諸国では、早々に英語教育が導入されているのに対し、そこから約20年の年月を経てようやく開始されました。
2020年に学習指導要領が改訂される前までは、中学校1年生からだったので、他国に比べてかなり後れを取っていたことがわかりますね。
国名 | 導入時期 | 小学校での開始学年 |
シンガポール | 1970年代~ | 1年生 |
韓国 | 1997年~ | 3年生 |
中国 | 2001年~ | 3年生 |
台湾 | 2001年~ | 3年生 |
ドイツ | 2004年~ | 3年生 |
フランス | 2005年~ | 1年生 |
スイス | 2005年~ | 3年生 |
フィリピン | 2009年~ | 1年生 |
日本 | 2020年~ | 3年生 |
参考:諸外国における外国語教育実施状況調査結果 (mext.go.jp)
日本は、TOEFL® TESTのスコアがアジアで下から2番目、TOEIC®スコアも100カ国中55位と非常に低いレベルであることがわかっています。
英語力の乏しいわたしたち日本人が国際社会で生き抜いていくには、義務教育の英語学習だけでは圧倒的に時間が足りません。
学校以外に英語学習の時間を設けたり、コミュニケーションを中心としたアウトプットの機会を増やしていったりする必要があるといえるでしょう。
【例文1】
It is important to learn English in English.
訳)英語を英語で学ぶことが大切ね。
Yeah, just as native speakers learn English.
訳)そうだね、ネイティブスピーカーが英語を学ぶようにね。
まとめ
「義務教育」を意味する2つの英語とともに、日本と海外の教育制度の違いも合わせて解説しました。
「義務教育」を表す英語は、”compulsory education”と”mandatory education”の2つです。
どちらも「義務的な」「必須の」といった意味があり、文書や会話でよく使われている表現といえます。
“compulsory”と”mandatory”はニュアンスに微妙な違いこそありますが、「義務教育」と言いたいほとんどの場合で置き換えできるので、ぜひセットで覚えておきましょう。
日本と海外の教育制度や学校の違いは、以下の記事でも解説しています。
特色を知り、理解を深め、コミュニケーションスキルを高めていけるといいですね。