アイルランドの首都ダブリンの北、ボイン川添いにあるボイン渓谷は1993年に世界遺産に登録されました。巨大な遺跡が集まっているこの場所にはどのような歴史があるのでしょうか。この記事ではボイン渓谷の歴史と魅力について英語を交えて解説します。
ボイン渓谷とは?
アイルランドの東部に位置するボイン渓谷(Boyne Valley)は、先史時代からの歴史を今に伝える神聖な場所です。1993年に「ボイン渓谷の遺跡群」としてユネスコの世界遺産に登録され、特にニューグレンジ、ノウス、ダウスの3つの巨石墳墓で知られています。現在ではアイルランドの国定史跡にもなっている部分です。
ボイン渓谷の歴史をもっと詳しく

ボイン渓谷(Boyne Valley)の歴史は、アイルランドの古代文化と深く結びついており、新石器時代から中世にかけて多くの重要な出来事がこの地で起こりました。以下では、ボイン渓谷の歴史を時代ごとに詳しく説明します。
新石器時代(紀元前3200年頃)
ボイン渓谷には、ヨーロッパでもっとも古いとされる、石造建築文化を代表する遺跡が残っています。中でも有名なのが、ニューグレンジ(Newgrange)、ノウス(Knowth)、ダウス(Dowth)という3つの巨大な墳墓群で、これらは「ボイン渓谷の遺跡群」として1993年にユネスコ世界遺産に登録されました。
ニューグレンジ(Newgrange)
ニューグレンジは、紀元前3200年頃に建造されたとされる巨大な墳墓で、世界遺産「ブルー・ナ・ボーニャ」の一部として登録されています。
ノウス(Knowth)
ノウスは、ニューグレンジと同様に新石器時代の墳墓群で、約300の石に刻まれた装飾が特徴です。
ダウス(Dowth)
3つの古墳の中で最も古いと考えられています。
ケルト時代(紀元前400年頃〜)
紀元前4世紀頃からアイルランドにはケルト人が到来し、ボイン渓谷周辺は宗教・政治の中心地となりました。この時代には、自然崇拝、特に雷や太陽信仰が盛んで、古墳群も儀式に使われたと考えられています。
タラの丘
鉄器時代の要塞の跡が残されています。この要塞は「王の砦」と名付けられており、王が即位するときにこの場所で儀式が行われたと推定されています。日光が差し込むつくりになっており、当時の太陽信仰を代表する建造物であると言えるでしょう。
ボイン川の戦い(Battle of the Boyne)
ボイン川の戦いは、1690年7月12日(ユリウス暦では7月1日)にアイルランドのボイン川近くで行われた戦いです。イングランドとアイルランドの支配権を巡るこの戦いは、アイルランド史およびイギリス史に大きな影響を与えました。
1. 戦いの背景
この戦いは、イングランド、スコットランド、アイルランドの王位を巡る名誉革命(1688年)から始まっています。
- ジェームズ2世(James II):カトリック教徒であり、名誉革命でイングランド王位を追われた元国王。王位奪還を目指し、アイルランドで支持を得て軍を結成しました。
- ウィリアム3世(William III of Orange):オランダ出身のプロテスタントで、ジェームズ2世の娘メアリー2世と共にイングランド王に即位。プロテスタントの信仰を守るため、ジェームズ2世の復権を防ごうとしました。
2. 戦いの経過
場所:アイルランド東部、ボイン川(現メース州近郊)
軍勢:
ジェームズ軍:約2万5千人(フランスの援軍を含むカトリック軍)
ウィリアム軍:約3万6千人(イングランド、オランダ、デンマーク、フランドルの多国籍軍)
ウィリアム3世はあらかじめ浅瀬の調査を行っていたため、川を渡ることができ、ジェームズ2世軍を側面から攻撃しました。ジェームズ軍は善戦しましたが、数と戦術で勝るウィリアム軍が優勢に立ち、最終的にジェームズ軍は敗北しました。
3. 戦いの結果
ウィリアム3世の勝利に終わりました。ジェームズ2世はアイルランドを離れ、フランスに亡命。その後、王位を取り戻すことはできませんでした。
アイルランドのプロテスタント支配強化
ウィリアム3世の勝利により、アイルランドにおけるプロテスタント勢力が確立し、カトリック教徒に対する差別的な政策(刑罰法)が強化されました。
4. 歴史的意義
イギリス王室の安定
ウィリアム3世とメアリー2世の統治が確立し、イギリスはプロテスタント国家としての地位を強化しました。
アイルランドにおける宗教対立の深化
この戦い以降、アイルランドではカトリックとプロテスタントの対立が深まり、長年にわたる宗教的・政治的な分断の一因となりました。
近代から現代
20世紀以降、ボイン渓谷の歴史的価値が認められ、考古学的な調査や保存活動が進められてきました。1993年には、「ボイン渓谷の遺跡群」がユネスコの世界遺産に登録され、世界中から多くの観光客が訪れる場所となりました。
ボイン渓谷の主要な見どころ

ボイン渓谷に観光に行く時のポイントを紹介します。いずれも世界的に有名な観光スポットで世界遺産に登録されているので大変貴重な経験ができます。
ニューグレンジ(Newgrange)
ニューグレンジは、ボイン渓谷で最も有名な遺跡で、約5000年前に建造された巨大な墓です。直径約85m、高さ約13mの円形構造を持ち、冬至の日には太陽光が墓の奥まで差し込む仕組みになっています。
この現象は太陽崇拝を示唆しており、古代人の高度な天文学的知識を証明しています。
英語での説明
Newgrange
Newgrange is a big tomb which is about 5000 years old. It’s the most famous place in the Boyne Valley. It’s round, about 85 meters wide and 13 meters tall.On the shortest day of the year (winter solstice), sunlight goes all the way inside the tomb. This shows that the people who built it knew a lot about the sun and stars.
ノウス(Knowth)
ノウスはニューグレンジよりも規模が大きく、20以上の副墳墓が周囲に広がっています。装飾された巨石が多く、特に渦巻き模様は死後の世界や生命の循環を象徴すると考えられています。
英語での説明
Knowth
Knowth is bigger than Newgrange. It has more than 20 smaller tombs around it.
It has many big stones with carvings, especially spirals. These spirals might mean the afterlife or the circle of life.
ダウス(Dowth)
ダウスは他の2つに比べて保存状態が劣りますが、冬至の日没に太陽光が石室に差し込むように設計されています。こちらも天文学的な知識が活用されたことを示しています。
英語での説明
Dowth
Dowth is not as well-preserved as the other two. However, it’s also designed so that sunlight goes into the tomb at sunset on the shortest day of the year.
This also shows that they knew about the stars.
まとめ:アイルランドの神秘を体感しよう
ボイン渓谷は、アイルランドの壮大な歴史と古代人の知恵を体感できる貴重な世界遺産です。特にニューグレンジの冬至の光景はとても美しく、長い歴史と優れた科学力を感じることができます。
アイルランド観光を考えている方は、ぜひガイドつきのボイン渓谷ツアーを体験してみてください。ガイドさんの説明を英語で理解するならKimini英会話を試してみてください。
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